松本太一録

学生と円滑な関係を築くにはどうすればよいだろうか@32歳

大学の教員になって早3年半が経ちました。教わる立場から教える立場に変わり色々と壁にぶち当たってきました。人に物事を教えるということは簡単ではありません。いま僕が「教える」ということに関してどんな風に考えているか記録しておきたいと思います。

始めは失敗だらけだった

僕は父親ゆずりの短気者です。気に食わないことがあればつい頭に血がのぼってしまいます。実験というものは孤独もので(研究というくくりでいうとたくさんの先生方に指導してもらいましたが)、自分なりのこだわりというものが付いてきます。

細胞を培養している培養皿の扱い方とか、タンパク質の検出実験で洗浄するときの洗浄液の量とか、かなり細かいところまで気を配ります。なぜなら、そうしなければ正しい結果を得られないからです。これは僕に限ったことではないのでは?仕事をしている人なら誰でも、他人は気づかないようなところに細かい部分に注意を払っているはずです。

そんな生活を6年間も続けて、いざ学生が配属されてきて、そのこだわりをグチャっとされることが僕には我慢できませんでした。

「いやいや、ここはこうだから!」
「なんでそんなことしたん??もっと考えてよ!」
「なんでそんなこともわかんないの?考えた??」

自分のこだわりをグチャっとされた苛立ちもありましたが、「こんな雑な作業をやっていたら社会に出た時にこの子は困るんじゃないか」という気持ちもあり、けっこう厳しいことを毎日学生に言い続けていました。今思えば理不尽な発言もたくさんありました。

「先生にはついていけません。」

学生は僕の厳しい指導に耐えられなくなってしまいました。もうそれからは最悪です(学生にとっても最悪だったでしょう)。毎日会うのが気まずいし、お互いギクシャク。お互い楽しくない時間を長く過ごすことになりました。そのころの学生さんには申し訳ないことをしたと今では反省しています。

最も重要なのは「信頼関係」

3年半経って(といってもつい最近のことですが)今は少し違います。

今は「怒らない」ように気をつけています。

教育というものはお互いの信頼関係が大事なんだと思うようになりました。「この先生から教わりたい。」とか「この先生の考え方は面白い。」とか思ってもらわなければ、お互い歩み寄ることはできませんし、建設的なアイデアなんて出るはずもありません。

「怒る」という行動はその信頼関係を壊してしまう可能性があります。かといって、間違ったことをした時には正してあげないと間違った方向に進んでしまいます。

そんな時はどうすればよいでしょうか。「怒る」のではなく「叱る」のです。

20年以上対人能力教育に従事している谷 誠之さんはブログでこのように述べています。

「怒る」とは、相手が自分に悪い影響を与えたり、自分が指示したとおりに動いてくれなかったりした場合に、自分が腹をたてたことを相手にぶつける動作なわけです。「オレハオコッテンダゾー」ということを相手にわかってほしいとか、うっぷんを晴らしたいとか、相手を困らせたいとか、そんな理由ですることなんですね。そのような自分の目的が果たせればそれでいい。相手がそれでどうなろうが知ったこっちゃない、というわけです。

一方「叱る」とは、相手が自分を含めて誰かに悪い影響を与えたり、自分が指示したとおりに動いてくれなかったりした場合に、相手をより良くしようとする注意やアドバイスを相手に伝える動作です。そして本人が同じ間違いを繰り返さないようにする、そんな理由ですることなんです。

「怒る」と「叱る」の違いをご存知ですか?より引用(一部改変)

重要なのは「相手をより良くしようとする注意やアドバイスを相手に伝える動作です。そして本人が同じ間違いを繰り返さないようにする」というところです。

間違いを正すためにやっている3つのこと

僕は学生に研究のすばらしさを伝えたいと思っています。「出てきた問題点に対して仮説を立てて、適切に実験してそれを検証する」という、宝探しにも似た好奇心をそそる一連の作業のすばらしさを伝えたいんです。それは、ただ怒るだけでは何も伝わりません。何ひとつわかってもらえません。

そこで、学生が間違ったことをしたと判断した時に最近僕が取り組んでいるのは
  1. なぜそういうことをしたのか聞く
  2. そのことがなぜ間違っているのか説明する
  3. どうすればうまくいくか教える
この3点です。

叱るという言葉よりも説得するという言葉の方がフィットするかもしれません。この3つのステップを踏むことで、学生は「この人は僕に教えようとしているんだ」と感じてくれます(と信じたい)。

このスタンスに変えてから、少しずつですが学生との関係がうまくいくようになりました。僕が怒鳴るのにビクビクして考えるどころではなかった彼らが、自分で調べ、仮説を提案してくれるようになりました。

昨日のデータミーティングでは、ディスカッションしたデータは1つでしたが、色んなアイデアが出て、1時間半もミーティングをしていました。すごく楽しかった。それは僕だけではなく、学生も楽しんでいるようでした。

このスタンスが合っているのか間違っているのかわからないですし、いつもいつもこの3つのステップを実践できているわけではありませんが(ついつい反射的に怒鳴ってしまうこともあります)、以前に比べたら学生との関係がうまくいっているのを肌で感じます。しばらく続けてみようと思います。

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