松本太一録

注射剤の配合変化の種類と回避方法

注射剤の配合変化の種類と回避方法

栄養輸液や注射剤を安易に混合すると、析出や沈殿といった外観変化や、有効成分の含量低下などの配合変化を生じ、期待する効果が得られないばかりか、生体への悪影響も引き起こすことがあります。

配合変化を回避するには、配合変化の種類とその発生要因を理解して、配合変化を予測し、防止することが必要です。

そこで、今回は配合変化の種類と回避方法について解説します。

配合変化とは?


2種以上の医薬品を配合した時に、薬効や副作用または理化学的性状に変化を起こすことです。

配合変化の種類


配合変化は以下の3種類に分類できます。

配合禁忌配合のために害を生じるので絶対に避けなければならない
配合不適配合による変化を適当な手段によって投薬可能にできる
配合注意外観などに変化を生じるが薬効に影響はない


配合変化の原因


配合変化の原因は、物理学的配合変化と化学的配合変化に分類することができます。

1. 物理学的配合変化について


1.1 pHの変化による析出


溶解度の減少による薬の析出は、配合変化の中で最も多くみられます。

溶解度の変化の大部分は、pH の変動によるものです。

通常、注射剤の pH は血清の pH 7.4に近づけることが望まれますが、薬剤の溶解度を高めるために pH を調整しています。

したがって、混合によって pH が変化すると、薬の溶解度も変化して析出析出する場合があります。

1.2 溶媒が希釈されたために起こる析出


薬を溶解させるためにアルコール類などの非水溶性溶媒を添加している場合があります。

これらの注射剤では、混合により非水溶性溶媒が希釈されて溶解度が減少し、薬が析出する場合があります。


2. 化学的配合変化


2.1 難溶性塩の生成


カルシウムやマグネシウムを含む注射剤や輸液類を他の注射剤と混合すると、成分同士が結合して難溶性のカルシウム塩やマグネシウム塩ができて沈殿します。

例えば、「ロセフィン®静注用」に入っているセフトリアキソンナトリウムは、輸液に入っているカルシウムと結合して難溶性のカルシウム塩を作ります。

新生児と乳児の肺および腎臓で析出物が生じて死亡に至った例も報告されています。

参考:「ロセフィンとリンゲル液を同時投与しないこと」

2.2 加水分解、光による分解


エステル、アミド、ラクタムといった構造を含む薬剤は、加水分解を受けやすい薬剤です。

加水分解は、pHや温度、光、亜硫酸塩、酸素、重金属イオンなどによって促進されます。

例えば、ガベキサートメシル酸塩(注射用エフオーワイ®)ナファモスタットメシル酸塩(注射用フサン®)はエステル結合を持っているので、pHがアルカリ側に傾くと加水分解されて、有効成分の含量が低下します。

また、亜硫酸塩によっても加水分解が促進される薬剤もあります。

そういった薬剤は、亜硫酸塩が入っている輸液(ネオパレン®輸液ビーフリード®輸液モリヘパミン®点滴静注ネオアミユー®輸液など)との配合には注意が必要です。

亜硫酸塩によって加水分解が促進される薬剤
ちなみに、亜硫酸塩は、薬剤の酸化を防止して製剤を安定させるために添加されます。

2.3 光のよる分解


ビタミン製剤(A、B2、B12、K)やカリウム製剤は光によって分解されやすいので、遮光による防止対策が必要です。

3. 配合変化を回避する方法


シリンジ内で、酸性あるいは塩基性の薬剤を直接混合すると、混濁したり沈殿を生じる可能性が高くなりますが、容量の大きな輸液へ混合するれば回避できる場合があります。これを希釈効果といいます。

1 剤ずつ別々に輸液に混合し、かつ濃度の高い、あるいは溶けにくい薬剤から先に混合すると、希釈効果により配合変化を生じにくくなります。

また、配合した後、時間が経つにつれて有効成分の含量が低下することもあるので、薬剤同士の接触時間を短くするのに、IV Push(側管からの急速投与)法や Piggyback 法(側管からの点滴投与)といった投与法があります。

さらに、IV Push 法や Piggyback 法でも配合変化を回避できない場合、つまり、混合直後に配合変化を生じる場合には、メインのラインを止め側管投与の前後に生食等でフラッシュを行う方法や、別ラインから投与することを検討する必要があります。

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