松本太一録

腎臓がんの治療に期待!京都大が全体像を解明

腎臓がんの治療に期待!京都大が全体像を解明

腎臓がんは予後が悪いがんで、ステージIIIになると5年生存率(5年後に生きている確率)はわずか30~50%です。そんな腎臓がんの全体像を京都大学の研究グループが解明したことを時事ドットコムが報じています。

腎臓がんの遺伝子異常の全体像を、全遺伝情報(ゲノム)解析により解明したと、京都大大学院医学研究科の真田昌助教らの研究グループが24日、米科学誌Nature Genetics電子版で発表した。腎臓がんの新たな治療法の開発が期待できるという。

腎臓がんのゲノム解析例はこれまでもあったが、サンプル数が少ないという問題点があった。研究グループは、大型コンピューターを使い、腎臓がん患者106人の腎臓がん細胞について、ゲノムや遺伝子の変異、染色体異常などを網羅的に解析した。

以前から、腎臓がんではVHLと呼ばれる遺伝子に異常が起きることが知られていたが、研究グループの解析でも92%の患者でVHL遺伝子の異常が確認された。残り8%ではVHL遺伝子自体には異常は見られなかったが、うち半数近くでVHLタンパク質中の特定の2カ所のアミノ酸に変異が起き、VHLタンパク質の機能異常が生じていることがわかった。

真田助教は「どの遺伝子に異常が起きているかを究明することで、個々の症例に応じた治療につなげられる」としている。

(時事ドットコムより引用・一部改変)


この研究の中心は「VHL」という遺伝子です。正式名称はVon Hippel–Lindau (フォン・ヒッペル・リンドウ)で、癌抑制遺伝子の一種です。

VHL遺伝子は細胞の中でどんな働きをしているか

VHL遺伝子は細胞の中でどんな働きをしているか

VHL遺伝子からはVHLタンパク質が作られます。このタンパク質はユビキチンリガーゼ(特定のタンパク質をユビキチン化する酵素)として働きます。

ユビキチン化されたタンパク質はプロテアソームという解体工場でバラバラにされます。ユビキチン化は「このタンパク質は壊していいよ!」というサインなわけです。

VHLの標的として最も有名なのはHIF-1αというタンパク質で、このタンパク質は細胞の増殖や血管新生を促進する物質の産生を活発にします。

つまり、VHL遺伝子に変異が起こるとHIF-1αをユビキチン化できなくなるので、HIF-1αが分解されず細胞内にいつまでもとどまって、がんの増殖や血管新生をドンドン促進してしまうことになります。

時事ドットコムが報じているように、腎臓がんの患者さんの多くはVHL遺伝子やタンパク質に異常が起こっていることはわかっていましたが、106名という大規模な試験によってその信頼性が増したことになります。

今後どのように研究が進むのか

HIF-1αタンパク質阻害薬

VHL遺伝子の変異によって細胞内濃度が上昇するHIF-1αが悪さするので、HIF-1αの機能を阻害すればいいという考え方です。

実際にいくつかのHIF-1αタンパク質阻害薬が開発途中ですが、あまりうまく進んでいないようです。

遺伝子治療

VHL遺伝子に変異があるのが根本原因なので、遺伝子レベルで治療しようという考え方です。

VHL遺伝子自体が変異しているのであれば遺伝子全体を交換したり、VHL遺伝子が抜け落ちていれば正常なVHL遺伝子を入れてあげるという方法が考えられます。

まとめると

  • 腎臓がん患者のほとんどはVHLに異常が生じている。
  • VHLの異常は細胞内のHIF-1α濃度上昇を引き起こす。
ここではVHLとHIF-1αの関係を中心に解説しましたが、VHL異常はHIF-1α濃度上昇だけでなく、他のタンパク質の濃度にも影響を与えている可能性があります。VHL異常がガン細胞にどのような影響を与えるのか今後の研究が待たれます。

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