松本太一録

これは面白い!2段階プロセスで腫瘍を狙い撃つ抗癌剤が開発された

これは面白い!2段階プロセスで腫瘍を狙い撃つ抗癌剤が開発された

がんの治療成績は新しい分子標的薬の登場により改善されてきています。しかし、分子標的薬といっても癌細胞だけを傷害できる抗癌剤はなく、少なからず正常細胞も傷害し、副作用を引き起こしてしまいます。

このたび、Stony Brook UniversityのNobuhide Ueki博士らの研究グループが開発した新たな癌細胞特異的な治療戦略が米国科学雑誌Nature Communicationsに発表されます。

2段階プロセスで腫瘍を狙い撃つ

薬物をがん組織に選択的に投与するために用いる多用途の化学的標識について報告する論文が、今週掲載される。この標識は、原理的には、さまざまな既存の抗がん剤に結合させ、異なる種類の腫瘍関連酵素による2段階の過程で取り外すことができ、これによって抗がん療法の有効性を高められる可能性がある。

この化学的標識を取り外して薬物を放出するためには、2種類の酵素が必要で、この過程が、主にがん細胞で起こることをNobuhide Uekiたちが報告している。その1つであるヒストンデアセチラーゼは、アセチル基をタンパク質から除去することで遺伝子発現を調節し、腫瘍内で活性化していることが多い。もう1つのカテプシンLは、腫瘍の進行と転移と結びついていると考えられてきた。ヒストンデアセチラーゼによって化学的標識からアセチル基が取り外されると、1つの結合部位が露出し、この結合部位によって、その後にカテプシンLによる切断が起こるのだ。Uekiたちは、大腸がんの動物モデルを用いて、この化学的標識を抗がん剤ピューロマイシンに結合させる実験を行い、標識されたピューロマイシンの方が、標識されていないものよりも腫瘍増殖の阻害効果が高いことを明らかにした。

natureasia.comより引用

一言で分かりやすく言い換えれば、「抗がん剤が癌細胞の中でだけ効くように2つの飾りを付けておく」という戦略です。ある種の癌細胞でヒストンデアセチラーゼ(タンパク質のアセチル基を切断する酵素。略してHDAC)という酵素の発現が増加しています。この酵素が働くと遺伝子を締め付けてしまい、がん抑制遺伝子の発現を低下させてしまいます。一方、カテプシンLは、タンパク質中のリジンを切断するタンパク質分解酵素の一種で、がんの浸潤や転移に関係していると言われています。

Ueki博士らは、癌細胞におけるこの2種の酵素の発現増加に着目して、この2種類の酵素によって切断されるような飾りを抗癌剤に施したようです。そうやって修飾された抗癌剤自体では細胞傷害性はありません。まず最初にHDACによってアセチル基が切断されますが、この時点でも細胞傷害性はありません。そして、カテプシンLによってさらにリジンが切断されて初めて細胞傷害性を発揮するとのことです(図1)。

これは面白い!2段階プロセスで腫瘍を狙い撃つ治療法が開発された
図1, 2段階プロセスで腫瘍を狙い撃つ治療法(Nature Communicationsより転載)

つまり、HDACやカテプシンLの発現が増加した癌細胞にだけ細胞傷害性を発揮して、そうでない正常細胞にはほとんど影響しないということになります。う~ん、新しいアイデアですね!面白い!

疑問点

上記の記事では、「大腸がんの動物モデルを用いて、この化学的標識を抗がん剤ピューロマイシンに結合させる実験を行い、標識されたピューロマイシンの方が、標識されていないものよりも腫瘍増殖の阻害効果が高いことを明らかにした。」とありますが、正常細胞への影響はないのでしょうか。そこがクリアできているのなら非常に画期的ですよね。

次の疑問点は、この治療法はHDACとカテプシンLの両方が増えている癌細胞にしか効果を発揮しないことになりますが、こういった癌がどのくらいの患者さんに見られるのでしょうか。もしほとんどの癌細胞で両方の酵素の発現が亢進しているなら、多くの癌患者を救える可能性が出てきます。

まとめ

これまでの抗癌剤開発は、癌細胞に特異的に発現している、もしくは正常細胞とくらべて明らかに増加しているタンパク質に対する阻害薬を作るというコンセプトで進んできました。しかし、たしかに癌細胞を殺す、もしくは増殖を抑制することができますが、どうしても正常細胞にも影響がでてしまい、副作用のない抗癌剤は現在ありません。今回発表される2ステップアタック理論はこういった問題を解決する糸口になるかもしれません。

近年、癌幹細胞と言われる細胞が癌細胞を供給しているという考えが一般的に受け入れられつつあります。この細胞は抗癌剤や放射線に抵抗性があり、癌細胞を殺せても癌幹細胞が生き残りるために再発するといわれています。癌幹細胞に特異的に発現する酵素を利用して、この細胞だけを殺すことができる抗癌剤が開発されると癌の化学療法はさらに向上すると思います。今後の発展・拡張が楽しみです!

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